人事制度の今を読み解く

弊社にて発行しております「月刊!人事・労務の玉手箱®NEWS」で、過去に掲載したコラム「人事制度の今を読み解く」を紹介しております。経営のヒントご活用ください。

アメリカ企業に学ぶ人事評価の目的

働き方改革や人手不足といった時代背景もあり、人事評価制度が注目されているように感じます。

しかし近年、アメリカ大手企業では、人事評価制度を廃止する動きが高まり、注目を集めています。
こうした動きが始まった背景は、2点あります。

  1. 人手不足による人材に対する意識の変化
    優秀な社員を優遇し、評価の低い社員には退職を促すこといった成果主義から一人ひとりの成長を重視するようになった
  2. ビジネス変化のスピードへの対応
    半年や一年といった評価サイクルでは、目標設定時と評価時のズレが生じてきた

Adobeの調査によれば、以下の意見がアメリカ企業で働く社員の半数以上を占めていました。

  • 人事評価の準備は、時間の無駄
    (マネージャーは部下の評価準備に、一人あたり平均17時間費やしている)
  • 人事評価によって同僚との競争が生まれ、ストレスが増えた
  • 数ヶ月かけてまとめられたフィードバックより、その場でフィードバックが欲しい

人材の成長を促し、企業の業績につなげていくには人事評価は不可欠です。
アメリカ大手企業が「人事評価制度を廃止した」といっても、人事評価そのものをやめたわけではなく、人事評価を「現場でのマネージメント強化」にシフトをしたということです。

  1. 年次評価制度を廃止
  2. 業務の振り返りやフィードバックサイクルの短期間化
  3. マネージャーによる日常的な部下のモチベーションや成長の支援への重視

「人手不足」「ビジネススピードの変化」といった時代背景は日本も当てはまりますが、日本企業の場合は、むしろ人事評価制度を利用することで、現場でのコミュニケーション強化が期待できます。

【アメリカ企業と日本企業の違い】

  アメリカ 日本
マネージャー
  • 人材育成を、成果を高めていくためのリソースの一つとして捉えている
  • 部下の報酬や昇進などの処遇を決める権限がある
  • 人材育成の対する認識が弱い
  • ほとんどプレイングマネージャーで余裕がない
  • 部下の報酬や昇進などの処遇を決める権限がない
人材育成
  • 大半を現場に任せている
  • 長期雇用からジョブローテーションなどにより、会社全体で取り組む
国民性
  • コミュニケーションがダイレクト
  • 上下関係があまりない
  • 空気を呼んで行動する
  • 直接的にものをいうのが苦手

評価面談をきっかけにしないと、部下の改善点は勇気を出して言えないといった日本のマネージャーも多く、人事評価制度がないと、部下をほったらかしにしてしまう危険性もあります。

以前、目にした大手外資系企業の人事評価制度の例です
年間評価の期末の1ヶ月を費やして、直属のマネージャーにWhat(成果)とHow(取り組み)をアピールする為のプレゼン資料を作成し、相対的な評価レートを社員同士で奪い合っていました。

業務効率化が進み、管理部門以外の社員は常に現場への直行直帰のため、周りの社員との面識もほとんどない状態です。
「敵は常に見ず知らずの社内」という意識の社員が多く、マネージャーは部下の育成と上層部からの成果への圧力により、毎年のようにマネージャーが退職する現象が起きていました。

その企業が今も同じ人事評価制度を継続しているかは不明ですが、アメリカ企業が人事評価制度を廃止するに至った背景と同じような事態を感じます。

人事評価は人が人を評価するもの、アメリカ企業の動きから、「現場での上司・部下とのコミュニケーションの強化により、社員一人ひとりの成長を促し、業績をアップさせること」という目的を改めて考えてみてはいかがでしょうか。

2017年5月 「月刊!人事・労務の玉手箱®NEWS」人事制度の今を読み解く

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