トラブル注意! IT経営における解雇
解雇・退職の際には、トラブルが起こりがちです。
正しい知識を持ったうえで、的確な処置をおこないましょう。
●IT経営における解雇
解雇とは、使用者の一方的な意思表示による労働契約の解約を言います。
解雇に関する規定は、一般法である民法では2週間前に雇用契約を一方的に解約することが出来ることになっていますが、経営者より弱い労働者を保護するため、 特別法である労働基準法により、30日前に労働者に通告することなっており、特別法は一般法に優先して適用されるため、労働者を解雇するためには、使用者は30日以上前に労働者に通告することが必要なのです。
解雇にはどんな形があるか
解雇には、次の3種類があります。
【普通解雇】
これとは、就業規則に定めのある解雇事由に相当する事実があって行われる解雇をいいます。
【整理解雇】
整理解雇とは、普通解雇のうち、会社の経営上の理由により人員削減が必要な場合に行われる解雇をいいます。
【懲戒解雇】
懲戒解雇とは、就業規則上の最も重い懲戒処分が科されて行われる解雇のことをいいます。
普通解雇の場合は30日前に予告するか平均賃金の30日分の予告手当を支払わなければなりませんが、懲戒解雇は即時に解雇するのが普通です。
また退職金を全額不支給にしたり、減額支給することもあります。
また、解雇予告なしに即時解雇するためには、労働基準監督署長に「解雇予告除外認定許可」を申請し、許可を受ける必要があります。
懲戒解雇を行うためには、就業規則上懲戒解雇事由が定められ、その事由に該当する具体的な事実が必要です(罪刑法定主義)。
懲戒解雇出来ない場合は、普通解雇を行います。
懲戒解雇事由は限定列挙、普通解雇事由は例示列挙と解されています。
懲戒規定の適用に当って、懲戒の根拠規定は、それが設けられる以前の事例には遡及的に適用することは出来ません。(不遡及の原則)
さらに、同一の事案に対し、2回以上の懲戒処分を行うことは出来ません。(一事不再理の原則)
そして、懲戒は、同種の非違行為に対しては、懲戒処分は同等でなければなりません。(平等扱いの原則)そのため、懲戒処分の記録を常に詳細に記録しておく必要があります。
懲戒処分は、非違行為の程度に照らして相当なものでなけれなりません。(相当性の原則)
●IT業界での退職・解雇トラブル
・ソフトウェア開発の業務請負会社で、派遣されていた現場での業務がなくなった事を理由に退職を強要された。
・試用期間中に、プログラムスキルが低くパフォーマンスが悪いと一方的に解雇された。
・派遣されていたプロジェクト内で他のメンバーとの協調性が低いことを理由に、退職を強要された。
・社員を解雇しなければならない場合の注意点。
・就業規則に規定している解雇事由に当該解雇の理由があるかを事前確認。
・既成事実に関する具体的な記録、会社側からの改善指導の経過に関するレポートを必ず残しておく。
・解雇権の濫用にあたらないよう感情的な態度での解雇措置と取られかねない態度をとらない。
・短時間で対応できるものではないことを十分に意識し、事実確認と解雇に至る経過を把握できる証拠を積み重ねる。
・解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。(労働契約法16条)