「執行役員」の位置付けと労働保険の取り扱いに関する質問が増えています。
執行役員は会社法上の取締役とは異なり、会社の業務執行に対する責任と権限を持つ役員を指します。
日本では1990年代後半より、経営に専念する人(取締役)と業務の執行に専念する人(執行役員)を分離して、それぞれの役割分担を明確にする執行役員制度が導入され、結果として多くの企業で執行役員が選出されました。
一方、執行役とは2002年(平成14年)の商法改正で創設された機関で、委員会設置会社で業務執行を担うものであり、執行役員とは異なります。
委員会設置会社では、業務の決定と執行機関が分離され、前者は取締役会が、後者は執行役が担当する形になります。
執行役員の雇用がどのような形になっているかで、労災保険や雇用保険の扱いが変わってきます。
社員が執行役員を兼務している場合は、労災保険も雇用保険も対象となります。
この場合、労働保険料の算定の基礎に含めるのは賃金部分のみで、役員報酬は対象外になります。
これに対して、委任契約の形で執行役員を任命している場合は労働者ではありませんので、労災保険・雇用保険の適用対象外となります。
社員を委任契約に切り替える場合には、一度退職とし雇用関係がなくなる事となりますので、労災保険・雇用保険の対象となります。
ただし、委任契約に切り替えた場合であっても労働者性が認められる場合は、労災保険が適用される可能性があります。
労働者性は、あくまでも実態で判断されます。委任契約に切り替えた後も、社員時と同じで業務内容に全く変更がなく指揮命令を受けていたり、実質的な執行権がなく形式的なものとなっている場合は、労働者性があると判断される可能性があります。
執行役員規程を設け、労働者性の有無や業務執行内容・責任所在などを明確にしておくとよいでしょう。
上記内容に関連する「アドバイザリー」ページもご覧ください。
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