20110520日本経済新聞
脳出血で死亡した執行役員の男性(当時62)が労災保険法上の「労働者」に当たるかどうかが争われた訴訟で、東京地裁の青野洋士裁判長は19日、「労働者に当たる」として、労災保険の不支給処分を取り消す判決を言い渡した。原告側弁護士によると、執行役員が「労働者に当たる」とする判断は初めて。

男性は機械商社のマルカキカイで部長を兼任する執行役員を務めていた。
2005年に商談からの帰りの車中で体調不良を訴え、脳出血で死亡。
男性の妻の労災申請に対し、船橋労基署は「労働者に当たらない」として退けていた。

青野裁判長は「一般従業員時代と執行役員時代の業務実態 が変わらず、一定額以上の取引では本社の決裁を仰ぐなど指揮監督を受けていた」と認定。
男性は毎月の経営会議に出席していたものの「最終意思決定 は取締役会でしており、経営会議の構成員だからといって当然経営者ということにはならない」として、男性の労働者としての権利を認定した。

死亡が業務の多忙さに起因するかどうかは判断しておらず、原告側は改めて労基署に労災認定を求める。
原告側弁護士は「零細企業の取締役を実質従業員と認める司法判断はあったが、大企業に多い執行役員も労働者に当たると判断されたことで『名ばかり役員』が減るのではないか」としている。
(以上、記事より)

この判決で注目されるのは、執行役員に対する「労働者性」の有無。

業務実態が従業員の時と変わらず、執行役員=管理監督者としての立場にない、と判断された点です。

労働基準法でいう「管理監督者」とは、以下に該当する者とされています。

●経営者と一体的な立場で仕事をしている
●出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない
●その地位にふさわしい待遇がなされている

中小零細企業では、取締役・執行役員の立場であったとしても、業務内容は従業員と同様の事から経営判断までと幅広く行われる事が多く、実態として労働者と同様の部分があるのは否めません。

会社法で定める取締役は労働者にあたらず、執行役員の立場だから労働者となるのかといえば、そこには各会社の実態による判断が出てくる事になります。

「経営会議の構成員だからといって当然経営者ということにはならない」とありますが、ここでは経営会議に与えられている決済権限もどの程度までなのか問題になってきます。

この判決結果が直ちに「名ばかり役員」扱いに結びつくとは考えませんが、管理監督者の立場というものが、より厳密に判断される傾向にはあるようです。


しっかりマスター労働基準法・管理監督者編
http://www.roudoukyoku.go.jp/seido/kijunhou/shikkari-master/pdf/kanri-kantoku.pdf

労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/kanri.pdf




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