人事・労務の知恵袋

雇用・定年 内定取消しの学生が労働審判を申し立て

asahi.com 1/20記事より

景気悪化に伴う新卒者の内定取り消しが全国で相次いでいる問題で、福岡県内の大学生が、内々定を取り消された福岡市内の不動産会社を相手取り、解決金を求める労働審判を月内にも福岡地裁に申し立てることが19日、関係者への取材でわかった。
日本労働弁護団事務局次長の佐々木亮弁護士によると、こうしたケースでの新卒者の申し立ては珍しい。
「早期に解決が得られれば、有効な対抗手段になる」と話す。

関係者によると、大学生は昨年7月、福岡市の不動産会社から内々定を得た。
同9月下旬、10月1日の内定式の案内を受け取ったが、式の2日前に内々定取り消しを伝える書面が速達で届いた。理由は「原油高騰や金融危機などの複合的要因」。
会社に問い合わせても、採用担当者は「書面の通り」と繰り返すだけだったという。

この大学生は現在、就職活動を再開しているが、まだ内定は得られていないという。
大学生は代理人の弁護士に対し、「春には社会人と喜んでいた矢先のことで、誠意のない会社の対応にも強い憤りを感じていた。
自分だけではなく、取り消された学生が泣き寝入りするしかない状況に一石を投じたい」と話したという。

厚生労働省は昨年12月、今春の就職予定者のうち、内定を取り消された大学生や高校生などが769人に上ると発表。福岡県内では31人が取り消された。内定を取り消した企業も172社に及んだ。
同省は19日以降、採用内定の取り消しを2年度以上続けたり、同一年度に10人以上取り消したりした企業は社名を公表する。
(以上、記事より)


今年に入ってからも、新卒採用を中止したとのニュースが出されています。
人材紹介会社では、JAC、インテリジェンスなど。
地方のニュースでは、14日に発表された鳥取市の「三洋電機コンシューマエレクトロニクス(CE)」が、大学・高専の新卒者の自社採用を2009年度限りで打ち切るとの事。
親会社の三洋電機での一括採用に切り替えるそうですが、1966年に鳥取三洋電機として創業以来、多くの新卒者を受け入れてきただけに、地元就職を希望する学生の進路に影響を与えるのではないかと懸念されています。

これにプラスして上記のニュース。
内定取消を不服とした労働審判は確かに珍しいケースです。

では現実として、採用取消としなければならなくなった時に注意すべき点はどうなのでしょうか。

厚生労働省の通達では「採用内定の時点で労働契約が成立したと見られる場合には、採用内定取消しは労働契約の解除に相当し、解雇の場合と同様、合理的理由がない場合には取消しが無効とされる」とあります。

具体的には、以下のように雇用契約に関する扱いを判断する事となります。
・内定通知をどのようにして行ったのか
・内定期間中の扱いに対して拘束性があったかどうか
・辞令等の交付はされていたか
・入社に際して保証人を必要としていたか、誓約書を取り交わしたか

とはいえ現実には、採用内定通知を書面で行い、これに入社を誓約しているのが通常です。口頭での採用内定通知という事はありません。
一方では、現在の社員の雇用を守る意味でも、やむを得ず新卒採用を中止したり内定取消とするしかない場合もあるでしょう。

新卒採用の内定だからと安易に考え対処すると、今回の労働審判のように採用内定取り消し無効の申し立てをされ兼ねません。

内定取消に至る経緯も含め、取り消しによる賠償責任など、対象学生と十分に話し合いをもって対応するのが肝要です。

投稿日:2009/01/20
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