固定残業代や定額残業代との名称で、毎月の給与に一定時間の残業代をあらかじめ含んで支給する方法があります。
この場合、定額残業代の上限をどの程度までにできるのかというご質問がよくあります。
36協定(サブロク協定)では月間の上限時間が45時間(1年単位の変形労働時間制では42時間)とされており、これを超えた時間で定額残業代を設定できないのではとされるようです。
定額残業代を算出する際の想定労働時間については、36協定の範囲内でなければならないというものではなく、あくまでも会社がどの程度の時間外労働をあらかじめ支給しておくかを基準に考える必要があります。
定額残業代で設定した時間外労働を超えた分については、当然の事ですが割増賃金を支払わなければならず、定額残業代を支払っているから、これ以上は必要ないというものではありません。
最近の判例でも、定額残業代を利用した不当な未払い賃金が多いせいなのか、定額残業代に対する判断は厳しくなってきています。
定額残業代を設ける際には、何時間分の時間外労働に相当するのかを具体的に明示していないと、これ自体が割増賃金を計算する際に除外する事ができなくなり、結果的に定額残業代として設定した額も含めた給与額で、割増賃金を計算しなければならなくなります。
定額残業代の上限時間については、36協定の範囲内でないとしても、過重労働の観点からみると長くても60時間程度までに抑えるべきでしょう。
参考判例
小里機材事件(最高裁判決 S63年7月14日労判523号)
岡部製作所事件(東京地裁判決 H18年5月26日労判918-5)
SFコーポレーション事件(東京地裁判決 H21年3月27日労判985-95)