一度65歳に引き上げた定年年齢を、就業規則を変更し、元の60歳に戻したいという相談がありました。
一度引き上げた定年年齢を下げるとなると、労働者側からすれば明らかな不利益変更にあたります。
過去の判例でも、新たな就業規則の作成または変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは原則として許されないとされています。
一方で、労働条件の集合的な処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建て前とする就業規則の性質からいって、当該就業規則が合理的なものである限り、個々の労働者が同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないともされます。
では実際のところ、どうすればいいのでしょう。
定年年齢を引き下げるにあたり、それがなぜ必要なのか、本当に必要な事なのかどうかという点と、引き下げる事に対する代償措置や経過措置をどのようにするかポイントになります。
企業側の人事施策とはいえ、高年齢者雇用の安定を目的に法改正も進められてきた中、引き下げる必要性があるのかどうかが問われます。
定年年齢の引き下げは、企業規模に関わらず従業員の今後のライフプランにも多大な影響を与えますので、十分に検討を重ねるべきものです。
単に就業規則を変更し、労働者代表を同意を得れば良いというものではありません。