人事・労務の知恵袋

人事・労務 失敗した部下への接し方が、会社全体に及ぼす影響

【執筆者】社会保険労務士法人スマイング コンサルティンググループ マネージャー 薄田 順矢

世間一般的に、失敗をした社員から聞き取りをする際に、怒られたり説教されたりするというイメージがあります。

航空会社であるANAグループの整備部門では、部下や後輩が失敗をしてしまった時に「叱る」よりも大事にしている文化があります。

それは聞き取りをする際に、次のことを部下や後輩に明確に伝える事。
「あなたを犯人扱いして、処罰のために事情聴取をするのでは絶対にない」
「あなた以外の社員が同じような事故を起こさないようにするため、どのような経緯だったのかを正確に聞かせてほしい」

一つの単純なミスが大事故に繋がりかねない事から、事故につながりうる失敗を防止するため、失敗をしたその社員にしかわからない状況や心の内を話してもらうことが必要だからこそ、こういう態度で接しています。

人間は必ずミスをします。
全航空会社の30年間の全損事故の主要因のデータによると、航空機材の不具合に原因があったものは2割、残りの8割は、人間のエラーによるものでした。

もし失敗した社員に対して、上司が叱ったり、説教するだけで、その社員にしか知りえない事故に至るまでの貴重な事実を聞き出せなければ、適切な事故の再発防止ができません。

失敗をした社員に協力を仰ぎ、感謝の姿勢で接するのは、お互いの間に信頼関係を築いて話をしやすくするためだけでなく、当事者とともに会社がいっしょになって安全を守っていくという信頼関係を構築するために他なりません。

人間は本質的にミスをするのであれば、その失敗を事故防止に資する価値あるものとして評価するという考えが、ANAの安全を支えていく根幹にあります。

人は、他人に承認されたい欲求も持っています。

部下や後輩が失敗をしてしまった時の、上司の接し方や感謝し認め合うことが方針として根付いている会社では、社員のモチベーションも高く、会社全体の成長につながっているのです。

参考)「叱る文化」の職場が伸びないこれだけの理由
http://toyokeizai.net/articles/-/122126

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投稿日:2016/06/21
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