東京商工リサーチ社の調査によると、2019年のリストラによる退職者数が6年ぶりに1万人を超えており、10~11月にはさらに、キリンHDと傘下のキリンビールなども希望退職者募集を実施しており、リーマンショック後の2010年の1万2232人を超えるのは見通しということが明らかになりました。
ころが近年では業績好調にもかかわらず、リストラに踏み切る企業が目立ち、とくに今年は顕著だ。
例えばキリンHDは2018年度決算ではビール類が全体を牽引し、大幅増収を達成。2019年度上半期も売り上げ、収益ともに好調が続いている。
キリンHD含め、2019年にリストラを実施したアステラス製薬、中外製薬、カシオ計算機などの有名企業も業績は堅調であり、2019年にリストラを実施した27社のうち、前期決算の最終赤字は12社、減収減益が6社、残りは業績が好調の企業とリストラ実施企業の3社に1つが業績好調になります。
業績が悪くないのに大量のリストラに踏み切る理由や背景として以下の3つが考えられています。
1.若手が少なく年輩社員が多い社員のいびつな年齢構成を解消し、新陳代謝を図る
2.新規事業への進出など中・長期的経営戦略を見据えた事業構造改革に必要とされない人材の放出
3.年功的人事・賃金制度から職務・成果に基づいた制度改革への移行に伴う社員の反発を防止する
数年前から毎年小規模のリストラを実施している建設関連会社の人事部長は、「好調な業績を維持できるのは東京オリンピックまでじゃないかという一応の目安を設定し、それまでに業績が悪化しても強固な人材基盤を築いておきたいから」と述べています。
「2.人材の放出」と「3.人事制度改革」は、連動していることが多く、既存のビジネスから新規事業領域にシフトする事業構造改革を実施する場合、能力的に追いついていけない、あるいは職務の転換に消極的な人が発生するため、そうした人をターゲットにリストラに踏み切るケースだが、リーマンショック時は業績不振で構造改革を実施した企業が多かったが、近年は業績好調のときに実施する企業も増えていています。
従来の年功型の賃金・昇進制度から職務・職責重視の職務給制度に転換し、同時にリストラも実施するなど、年輩社員の不満分子が滞留すれば若手のモチベーションにも悪影響を与えるため構造改革と連動した人事制度改革に伴うリストラが増えています。
大企業では、2020年4月から中小企業では、2021年4月から同一労働同一賃金が施行されるため、年功序列型ではない人事評価制度の見直しをする企業も増えており、この流れは加速する可能性があります。
人材育成から定着率向上につながる人事評価制度
https://www.nari-sr.net/media/seminar/201702-03