新型コロナウイルスの感染拡大の影響で導入した在宅勤務を継続するかどうかで企業の対応が分かれてきています。
伊藤忠商事社は、緊急事態宣言を解除した翌日から段階的に出社していく社員を増やし、特別な事情がなければ出社するよう切り替えています。社員食堂やエレベータの混雑緩和などの対策をしつつ出社へと踏み切った背景として、同社会長CEOは「在宅勤務での生産性維持の難しさ」と「取引先との関わり」を挙げ、家庭での集中力維持の難しさや、取引先のニーズに対応するため、会社という環境が必要という考えを述べております。
キーエンス社も、「研究開発や営業など在宅ではできない」と判断し、緊急事態宣言解除後は、会議室の人数制限やパーテーション設置など対策を講じて通常勤務に戻しています。一方でウェブ会議システムなどの活用を進め、出張や移動によるロスを軽減し「従来の働き方の継続でなく、今まで以上に幅広な働き方ができる」としています。
日立製作所社は、2021年4月以降の在宅勤務の本格活用に向けて制度などの見直しに着手し、業務や家庭環境によっては業務効率が高まっており、役割の明確化などジョブ型の働き方を進め、多様な人材の獲得やグローバル展開のために必要と判断しています。
味の素社は、政府が「新しい生活様式」でテレワークなどを推奨するなか「国の方針に沿って行動するのが原則。大企業が率先して新しい働き方を進めるべきだ」とし、当面は在宅勤務を維持する予定になります。
日清食品ホールディングス社は、6月から事前予約による調整でオフィスに出社する人数を25%に制限しているが、「普段の雑談から生まれるひらめきもある。実害は無いが、長い目で見れば影響はあるかもしれない。この環境下で何をすればいいか常に考えている」と懸念しています。
社員の3割が外国人である物流スタートアップのGROUND社は、英語や中国語など多数の言語が飛び交うオンライン会議では、補佐役のバイリンガルの社員がいない場合にコミュニケーションをとるのが難しくなったと述べており、在宅勤務は外国語を母国語とする社員が多い企業では、言葉の壁のハードルになっていると考えられます。
リクルートワークス研究所社の主任研究員は「これまでの働き方を見直すきっかけになる。これを機に在宅勤務を定着させるかどうかで、多様な人材が活躍できるかなど採用力に違いが出てくる」と分析しています。
IT業界の場合、業務内容や職種によりますが、在宅勤務を継続される企業が多いように感じます。対象業務の整理や、オンラインで対応の可否、オンラインの場合のコミュニケーションの質・生産性の観点・その他に障害が無いか等を改めて確認し、多様な働き方の選択肢を増やしている企業も見受けられます。
テレワークにも欠かせない人事評価の仕組みづくり