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裁判・判例 ノキア所長の労災死認定「接待も業務」

共同通信
携帯電話メーカー「ノキア」の日本法人で、大阪事務所長だった男性が在職死したのは過労が原因として、東京都大田区の妻が遺族補償年金などの支払いを求めた訴訟の判決で、大阪地裁は26日、不支給とした大阪中央労働基準監督署の処分を取り消した。

中村哲裁判長は、会社での会議後などにあったボーダフォンなど取引先の接待について、男性は酒が飲めなかったにもかかわらず週5回ほど開かれていたことや、費用が会社負担だったことを指摘。「技術的な議論が交わされており、ほとんどが業務の延長」と判断し、労働時間に算入した。

またトラブル対応のため、24時間携帯電話の電源をオンにすることが求められていたことなどにも触れ「不規則な勤務状態にあった」と指摘。
死亡1~6カ月前の時間外労働と合わせ「業務上の重い負担により死亡した」と認定した。

判決によると、男性は西日本地方の通信ネットワークの保守管理などを担っていたが2005年9月、接待先の居酒屋で、くも膜下出血を発症、翌月56歳で死亡した。
妻は遺族補償年金と葬祭料の請求をしたが、同労基署は2006年、労災を認めず不支給処分とした。
(以上、記事より)


この判決では、接待の時間も業務であったと認定されたものです。

認定された点として以下の状況があげられており、その結果として病気を発症したとしています。

・本人は酒が飲めないにも関わらず接待をさせられていた

・週5回の接待があった事=平日は毎日接待が行われていた

・接待費用が会社負担であった

・会社での会議後に行われていた接待の場で技術的な議論が続けられており、接待といえる内容ではなかった

・死亡前の6か月間は、時間外労働が1カ月当たり約63~81時間あっただけでなく、24時間いつでも緊急対応に応じなければならない状況にあった


死亡前の勤務実態だけでも労災と認定される可能性が高いと思われますが、接待の実態が加わっても 労災認定がされなかったというもの。

接待の場とはいえ、技術的な議論が出てくるのは業務上からみれば当たり前といえる部分もあり、接待だからといって、業務に全く関係のない話題だけとなるかは疑問があります。

また接待費用が会社負担であった事も労災認定の一要因となったようですが、これが自己負担であったとしたら、果たして認定がされたのか難しい判断かもしれません。

労災認定は様々な背景・要因から判断されるため、同様のケースであったとしても認定されたりされなかったりと、行政の判断が分かれてきます。

今回のような勤務実態は会社側にも責任が求められるものといえ、大阪事務所長という管理職の立場というのは、一般企業でもよくあるポジションであり、これらの役職にある者に対しての勤務状況の把握と指導が、行政からより一層求められるものといえそうです。


労災保険給付の概要(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-12.pdf

脳・心臓疾患の労災認定(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-11.pdf



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投稿日:2011/10/31
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