【今回のポイント】
- 研修に参加した際の費用負担は、会社からの指示があったものか任意に参加したものかで違ってくる
- 研修受講時の賃金は、原則は通常働いたときと同額を支払う。研修内容や会社からの指示度合いによっては、労働時間内に行われたとしても実際に働いているものではないので、あらかじめ就業規則等に規定しておくことで、通常の賃金を支払わなくても良い場合もあり得る。
業務上必要のある教育研修であった場合や、業務命令で講習会への参加を義務付けたものについては、会社の指示によるものであるため会社負担とするのが妥当であり、従業員に請求はできないでしょう。
ただし、研修への参加が採用者の自主的ものであったり、会社の業務に直接関係のない研修へ参加する場合は、費用を請求しても問題はありません。
医療機関などでは、従業員の足止め策として、研修終了後一定期間就労を義務づけ、その期間内に退職した場合には研修費用を返還するという誓約書を取り、この誓約書の提出が退職の自由を不当に奪うものかどうかが問題となることがあります。
この場合、研修への参加が強制されており、研修の内容が業務上必要とされるものであるときは、雇用関係を不当に強要し損害賠償を予定しているものであるため法律に違反しているとされます。(労働基準法16条)
法律に違反しているかどうかの判断は、研修費用が立替的なものであるか、研修参加の強要度合い、退職の自由が守られているかによります。
なお研修受講中の賃金については、労働時間内に行われたものであったとしても実際に仕事をしているわけではありませんので、通常の賃金と同様の額を支払うのではなく、最低賃金以上であればよいともいえますが、この場合は、予め就業規則等に定めておく必要があり、定めがない場合は、通常の賃金と同様額を支払う義務が発生します。
業務上必要のある教育研修であった場合や、業務命令で講習会への参加を義務付けたものについて、研修や講習会が労働時間内に行われるものであれば、通常の賃金を支払うべきでしょう。
採用内定後、入社時までに行われる研修については、採用通知書や雇用契約書などで研修への参加が義務付けられていたり、または入社後の業務遂行に必要不可欠な知識や技術の習得を目的とするものである場合は、使用者の指揮命令下にある=拘束されているものとなり、教育研修に参加している時間は、労務を提供しているものとされるため、賃金の支払いが必要となります。
(S26.1.20基収2875,H11.3.31基発168)
この場合、支払う金額については具体的に決められていない場合であっても、身体障害により労働能力が著しく低かったり、試用期間中、軽作業などを理由に個別に都道府県労働局長の最低賃金の減額許可を受けたもの以外は、法律により、国が定める最低賃金以上の賃金を支払わなければいけません。(最低賃金法4条、同7条)
H22年10月より最低賃金が引き上げられていますので、最新の最低賃金額をご確認ください。
(東京都:837円、神奈川県:836円、埼玉県:759円、千葉県:748円、いずれも時間額)
上記内容に関連する「社員も安心、会社も納得の就業規則」ページもご覧ください。
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