テクノロジーの活用によって人材育成や採用活動、人事評価などの人事領域の業務の改善を行うHRTechが注目されているが、採用など人事労務分野へのAIの活用については悪影響が懸念されています。
先日のリクナビ社がAIを使って学生の内定辞退率を算出し、企業に販売していた問題もありましたが、2019年9月に労働政策審議会は、労働者のプライバシーの保護や個人データを適切に活用するための倫理観が不可欠であると述べるとともに、AIによる判断に関する企業の責任・倫理ついて、「AIの情報リソースとなるデータやアルゴリズムにはバイアスが含まれている可能性があるため、AIによる判断に関して企業が果たすべき責任、倫理の在り方が課題となる。例えばHRtechでは、リソースとなるデータの偏りによって、労働者等が不当に不利益を受ける可能性が指摘されている。このため、AIの活用について、企業が倫理面で適切に対応できるような環境整備を行うことが求められる」と指摘しており、具体的対策として、以下を提起しています。
1.人事労務分野でAIをどのように活用すべきか労使や関係者で協議する
2.HRTechを活用した結果にバイアスや倫理的な問題点が含まれているかを判断できる能力を高める
3.AIが行った業務の処理過程や判断理由が倫理的に妥当か、説明が可能かどうかを検証する
IBMのワトソンを使った採用選考や、AI面接を導入する企業も出てきていますが、アマゾン社の事例として、AIを活用した人材採用システムに過去10年間の履歴書のパターンを学習させた結果、ソフト開発など技術関係の職種採用ではシステムに性別の中立性が働かない事実が発見され「女性を差別する機械学習の欠陥」が判明し、過去のデータが古い価値観に基づいたものであれば、今の価値観に合わない答えを出す可能性もあります。
IT企業など複数の企業の人事責任者の経験を持つ社モザイクワーク社の取締役髙橋氏は、「AIを使う最大の障害は、人事部が人事の仕事を論理的に整理できていないこと、もう一つがデータを取り扱う人事担当者が倫理観を含めて必要な要件を定義できない、つまり論理的に考えるスキルが不足していること、AIは決して万能ではない。その活用方法を間違うと、働く人にとって不幸をもたらす可能性もある」と指摘しています。
HRTechナビの2019年の調べによれば日本における人事労務分野のクラウドサービスは390社ありますが、そのうちの半分以上が「求人・採用」関連になります。
今後のHRTechは、自動化・統合のフェーズから、人材活用や生産性向上のためのチームマネジメントなどのエンゲージメント・エンパワーメントを高めるフェーズに入っていくと予測されます。
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