厚生労働省が国の事業として初めて職場のLGBTに関する実態を調査し、企業の取り組み事例をまとめた報告書を公開し、LGB(同性愛や両性愛者)の約4割、トランスジェンダーの約5割が職場で困りごと抱えていることがわかりました。
報告書によると、性的マイノリティは雇用の現場で不利益を被りやすいため、就業継続が難しくなり、心身に支障をきたすこともある一方、当事者の困難は周囲に見えにくいため、企業による取り組みはなかなか進んでいないと指摘しております。
LGBT施策を進める企業のうち、取り組みをはじめたきっかけは「社会的な認知度の高まりをみて、取り組むべきと判断したため」が67.3%と最も高く、近年のLGBTに関する注目度の高まりが企業のLGBT施策推進の契機となっており、他にも「同業種や周囲の企業の取組をみて、取り組むべきと判断したため」「性的マイノリティ当事者である社員から要望や対応を求める声があったため」が共に18%と、企業同士の取り組み推進や社内からの声によっても施策が推進されていることがわかりました。
一方で、回答した企業のうち、実際に「同性パートナーへの福利厚生に関する施策を実施している」企業は2割、「倫理規定や行動規範等に関連した取組を実施している」企業は2~3割程度にとどまっています。
企業が実際に当事者から受けた相談内容については、「トイレや更衣室の使用に関する相談」が19%と最も高く、次いで「勤務時の服装や通称名の使用」「福利厚生など社内制度の利用」など。さらに4%が「上司や同僚からの性的指向・性自認に関わるハラスメントに関する相談」を受けたと回答しており、働くLGBTの当事者のうち、行われたら良いと思う施策については、LGBの23%が「福利厚生での同性パートナーの配偶者扱い(家賃補助、介護・看護休暇、慶弔休暇など)」、Tの24%が「トイレや更衣室など、施設利用上の配慮」と回答。LGBT全般に「性的マイノリティに関する倫理規定、行動規範等の策定(差別禁止の明文化など)」などが比較的高い傾向がみられます。
企業側が性的マイノリティに関する取り組みを進めるにあたって、国や自治体に期待することについては「ルールの明確化」が47%、「取組に対する情報提供」が41%と高く、LGBT差別禁止法や同性婚などの法整備が求められていることがわかりました。
大企業では、2020年6月から施行される「パワハラ防止法」では、SOGIハラ(性的指向や性自認に関するハラスメント)やアウティング(本人の性的指向や性自認を同意なしに第三者に暴露すること)も、企業等に防止対策が義務付けられます。
LGBTという「言葉」の認知は高まりつつあるとはいえ、依然として当事者を身近に感じている人は多くない現状。いまだ差別や偏見の残る職場で、ハラスメントの起きない環境を整備することは、望ましい施策ではなく、今後は、最低限必要な施策になります。
報告書では、働くLGBTの当事者や企業の意識、実態に関する調査だけでなく、LGBT施策に取り組む19の企業の具体的な実例をまとめた事例集も公開している。これを活用し、より多くの企業がLGBT施策を推進することが望まれる。多様な性のあり方と職場をめぐる動きは、より実践的なフェーズに移行しつつあります。
ハラスメントに関する規程や社内向けのガイドライン策定、研修の実施やイーラーニング等で正しい知識の教育をされる企業や、社員アンケートによる現状の実態把握、相談窓口や相談する際のワークフローの明示による未然の防止策を講じる企業も増えています。
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