新型コロナウイルスの感染拡大で、発注キャンセルなどが相次ぎ、フリーランスの立場の弱さが顕在化しましたが、政府はフリーランスとして働く人を独占禁止法などの法令で保護する指針を2020年内にもガイドラインをまとめる予定になります。
組織に属さずスキルを生かすような多様な働き方を法的な安全網の整備によって後押しし、取引する企業側が契約内容を書面で残さなければ独禁法違反につながる恐れがあることなどを明記する方向になります。
内閣府や厚生労働省などの試算では、国内のフリーランスは300万~400万人台に達し、裾野が広がっているが法的な位置づけが曖昧なため、不利な立場に陥りやすくなります。
内閣官房の2~3月の調査では、企業から業務を受託するフリーランスの約4割がトラブルを経験したと答えており、うち6割超は取引条件が書面やメールで交付されていないか、条件の記載が不十分だったとなります。
新たな指針は公正取引委員会、中小企業庁、厚労省が連名で出し、企業とフリーランスの取引全般が独禁法の対象になるとの考え方を示す予定になります。
発注者が資本金1000万円超の企業の場合は下請法も適用し、取引の実態が雇用関係に近い場合には労働法の網もかけ、契約条件を書面で示さない場合、独禁法上の「優越的地位の乱用」を招く恐れがあるとして書面交付を促し、仕事内容に見合わない低報酬や、成果物の権利の不当な要求を実質的に禁じる予定になります。
独禁法は原則として事業者間の取引が対象のため、公取委は長年、人材分野への適用に消極的でしたが、近年フリーランスが増え、人材の獲得競争も生じていることから、姿勢を転換した。
世界でもフリーランスを法的に保護する動きが広がっており、フランスは健康保険などの社会保障を会社員と同じように受けられる仕組みを既に整えており、米国はIT人材を企業間で引き抜き合う動きが問題となり、人材分野にも反トラスト法(独禁法)を適用する可能性があることを2016年の指針で示しています。
また、政府は個人事業主などフリーランスで働く人を保護するため、労災保険に特別加入できるよう制度を改正する方針を固め、フリーランスを推進しており、仕事でけがや病気になった場合でも公的な補償を受けられるようにするとしています。
今後もフリーランスやギグワーカーといった働き方は増えるかもしれませんので、受け入れる側の企業体制も重要かもしれません。
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