2023年10月、三井住友海上社が職場全体で育児を支援する風土を醸成することを目的に育児休業を取得する社員が在籍する職場のメンバー全員に対し、一律(最大で10万円)を支給するとした人事施策が、話題を呼んでいました。
支給額は大きく「育休の取得期間」と「職場の人数」の2つのファクターで決まるようですが、制度のスタートから約1年、実際の運用状況は「2024年4月末までに450件の育休取得があり、470拠点の8900人に対して手当を給付しました。」と同社の人事部の担当者がコメントしています。
社員へのアンケートでは、手当の支給をきっかけに「自分自身のワークライフバランスの意識が高まった」とした人が46%に上り、これから出産や育児を視野に入れている若い世代にとっては、身近な同僚が子どもの誕生という大きなライフイベント迎えていることを改めて意識するきっかけになったようです。
それだけでなく、人事部の担当者からは「生活で経験したことを仕事に生かしていくという機運が高まった」、「会社は仕事以外の、プライベートの自分も尊重してくれている』という意識が広まったのでは」と、社内の風土にも変化が生じている様子のコメントをしています。
また、引き継ぎなどを通じて「職場全体の業務の見直しにつながった」という意見も3割程度見られ、育休に限らず欠員が出た際、残った人員でどのようにカバーしていくべきなのかは問題になりやすいため、職場の全員に一律手当が支給されることで、育休取得者の業務を「一部に偏ることなく分担しよう」という意識が生まれやすくなった可能性があるようです。
この施策は、「少子化という社会課題に対し、子育てをする人と、支える職場の同僚の溝を埋め、子どもの誕生をお祝いするための施策を作ろう」と、同僚に支給する形になったそうですが、職場全体の業務の見直しなど想定外の効果も出ているようです。
令和4年の育児・介護休業法の改正により、男性の育児休業の取得率も増えており、令和7年4月にも育児・介護休業法は改正が予定されていますが、育児休業に関する会社独自の仕組みづくりは全体に好影響がありそうです。
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