日本経済新聞
政府が進める「社会保障と税の一体改革」の柱となる年金制度改革に関する厚生労働省原案が18日、明らかになった。
改革は2段階に分けて実施。
数年後の実現を目指す第1段階では、高所得者向けの給付額を抑制するほか、専業主婦からの保険料徴収なども検討。パート労働者の厚生年金への加入条件を緩和する。給付抑制と無年金・低年金対策の強化を組み合わせ、年金制度の信頼回復を目指す。
原案の第1段階は現行制度の改善、第2段階は民主党のマニフェスト(政権公約)にも盛った最低保障年金の創設など、より抜本的な制度の変更を目指す内容だ。
高所得の受給者を対象に給付の抑制策を盛るのは、厳しさを増す年金財政を少しでも安定させる狙い。
一定の所得がある受給者には年金支給額を縮減する案を検討する。
「同じ保険料を払ったのに、所得によって受給額が違うのはおかしい」との指摘がでる可能性もあるため、公的年金収入にかかわる所得控除を縮小するなどして負担増を求める案も併記した。
自営業者の世帯や働く女性と比べ不公平と批判があるサラリーマンや公務員の専業主婦ら(第3号被保険者)の年金も見直す。
現在は保険料を払わなくても基礎年金を受給できるが、一定の負担を求める案を明記した。
夫の収入の半分に相当する保険料を妻が納めたとみなす制度と並行して議論する。
無年金や低年金への対策も強化する。
パートや派遣社員などの非正規労働者の厚生年金加入を増やし、正社員との格差を縮小する。
現在は週30時間以上働いている人だけが加入できるが「週20時間以上働き、31日以上雇用されること」と条件を緩める。
年金受給に必要な保険料納付期間(現在25年以上)を短縮。
老齢年金を受給する低所得で年金額が少ない受給者には基礎年金の加算を検討する。
官と民の年金格差を是正するため、公務員が加入する共済年金と、サラリーマンが加入する厚生年金は一元化する。
共済年金と厚生年金で異なる保険料率や遺族年金の給付要件などを、厚生年金の基準にそろえる。
共済年金と厚生年金の積立金も一元化して運用する。
自営業者が加入する国民年金を含むすべての年金の一元化は第2段階で取り組む。
払った保険料に応じた年金をもらう「所得比例年金」を創設。
所得が少ない人向けに満額で月額7万円を念頭に支給する「最低保障年金」を創設する。
同時に、抜本改革の環境整備として、社会保障・税共通番号制度の導入や、税と社会保険料を一体徴収する歳入庁の設立を検討課題に挙げた。
(以上、記事より)
年金財源の減少が危惧されている中、社会主義的な印象を受ける制度改革案が打ち出された感があります。
すべての年金を一元化し給付を同じくするというのは制度上の合理性もあると思われます。
同様に、第3号被保険者とされる専業主婦からも保険料徴収を行う点には、以前から国民年金加入者との格差がある事からみても合理性があると考えます。
一方で、高額所得者(どこからが高額所得者というのかは疑問)に対する給付率引き下げは、所得が少ない人向けの最低保障年金支給と同様の社会主義的な考え方が基本にあると思われ、納得感が得られるものとはいえそうにありません。
自分が払ってきた保険料に応じた給付を受ける事ができるのが基本的な考え方であり、これを所得に応じて給付を変えるというのは、法律に照らし合わせても合理性がありません。
本来の国民皆保険・皆年金の主旨に立ち返り、保険料の徴収基準から給付の公平性まで、根本から考え直してもらいたいものです。
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投稿日:2011/04/20
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