日本経済新聞
収益改善で企業の採用意欲が持ち直しているのにもかかわらず、完全失業率が5%台で高止まりしている。
産業構造の変化に伴い、企業と仕事を探す人の希望がかみ合わない「ミスマッチ」が拡大しているためだ。
今年のノーベル経済学賞の受賞が決まった「サーチ理論」もミスマッチが雇用不安の根底にあると説いた。
政府はミスマッチ対策への取り組みを進めているが、職種間の労働移転を促せるかどうかが課題になる。
「ミスマッチは無視できない」。日本経団連で、こんな議論が交わされている。
2000年前後の就職氷河期に匹敵する今年の就職戦線。
経団連は原因の一つに企業と学生のニーズが合わないミスマッチがあるとみて、来年1月公表の雇用に関する報告書で企業に問題提起する考えだ。
雇用のミスマッチはどの程度あるのか。
シティグループ証券の劔崎仁氏の推計では、9月の完全失業率5.0%のうち、ミスマッチ要因による失業率が約3.7%を占め、需要不足要因の約1.3%を大きく上回った。
需要不足要因は、リーマン・ショック後の1.9%から改善してきたが、ミスマッチ要因は3%台半ばから後半で横ばい。求人が回復しても失業率がなかなか下がらない理由はここにある。
実際、医療・介護分野などの有効求人倍率は1倍を超す。
「サービスの対象者を増やしたいが、人手が足りない」。都内の訪問介護・看護事業所の担当者はこう嘆く。
1990年代前半までミスマッチ要因は2%台前半だったが、産業構造の転換に伴って3%台に上昇した。
今年度の経済財政白書によると、ここ数年は年齢や地域よりも職種が合わないミスマッチが急増。
生産現場や一般事務の求職者が過剰になる一方、専門・技術職では求人を満たせない。
失業率を早期に3%台に引き下げる――。政府は6月の成長戦略で、こんな目標を掲げた。
だが景気が回復しても、3%台後半で高止まりするミスマッチ要因の「岩盤」を突き崩さない限り、目標達成は難しい。
ミスマッチ要因による失業は先進国に共通する課題だ。
人件費の安い新興国に生産拠点が移転し、国内では工場での単純労働や簡単な事務などの仕事が減少傾向にある。
こうした動きに職業訓練の整備などが追いつかず、失業が長期化しやすくなっている。
6カ月(米国は27週間)以上にわたって失業状態にある人を長期失業者と定義すると、日米とユーロ圏の合計は4~6月期の平均で1803万人に達する。
ユーロ圏が964万人で前年同期に比べて21%増加し、米国も66%増えて669万人になった。
雇用のミスマッチを埋め、就業を促すことが日米欧ともに避けられなくなっている。
(以上、記事より)
求人側・求職側それぞれが職種に求めるスキルと給与にかい離があるほど、ミスマッチは発生しやすくなります。
医療・介護分野、特に介護分野では求人が多いものの求職者が少ないのは、有資格やスキルの問題ではなく、長時間労働や心身の疲労度合いが大きい割に賃金が低いという、実際の就労条件と賃金バランスが要因とされています。
対してIT業界では、プロジェクトマネジメントやシステム設計ができる人材が欲しいものの、企業の求めるスキルが不足しているという点でミスマッチが起きているともされます。
長期(大よそ6ヶ月以上)にわたり失業状態にある求職者をみていると、求める職種を限定しすぎていて自身が求人幅を狭くしているようにも感じられる時があります。
雇用構造、仕事に対する賃金設定、求人・求職がそれぞれ求めるものの違い、仕事に対するイメージなど、ちょっとした事から社会的要因まで様々なものが雇用のミスマッチを起こしているといえます。
このギャップを埋めるためには、国の施策として考えられがちな法的整備だけではできるものではなく、もっと根本的なところにある食い違いを解消していかない限り、ミスマッチは拡大・長期化するのは間違いなさそうです。
人事・労務の知恵袋
- 雇用・定年 職のミスマッチ拡大、失業率5%の7割強占める
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投稿日:2010/11/01
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