日本経済新聞より
財政難の厚生年金基金から企業が離脱する動きが加速しそうだ。長野地裁は24日、財政が悪化した厚年基金からの脱退を巡る訴訟で、長野県の建設会社の脱退を認める判決を出した。「脱退の自由」が認められたことで、AIJ投資顧問による年金消失問題で財政難に陥った多くの基金で同様の動きが広がる可能性がある。脱退が増えれば基金の財政は一段と悪化する懸念がある。
厚生年金保険法や規約には任意脱退を直接的に定めた規定はなく、「脱退の自由」が認められるかどうかが最大の争点だった。「やむを得ない事由がある場合」との条件付きながら脱退を認めたことで、基金からの離脱を模索する企業の背中を押すことになりそうだ。
厚生年金の一部(代行部分)と企業独自の上乗せ年金を一体運用する厚年基金は、運用の低迷が続き、2011年度末で576基金の半数が代行部分に損失を抱える「代行割れ」に陥っている。積み立て不足が増えれば企業の穴埋め負担は重くなるので、比較的体力がある上場企業では今年すでに11社が脱退を決めた。これは過去5年で最多だ。
半導体製造装置の東京精密は今月、本体と子会社が厚年基金から脱退することを決めた。宝飾品ブランド「4℃」のF&Aアクアホールディングスも「運用難で将来、負担が増える懸念 がある」とみて、9月末に孫会社を東日本ニット厚年基金から脱退させる方針だ。
基金を抜けたくても代議員会が認めない例も目立っていたため、判決を受けて脱退を目指す動きが加速しそうだ。AIJに資産の5割超を預けた神奈川県印刷工業厚年基金に加入する印刷会社社長は「これ以上損失が膨らむともたない。脱退も選択肢」と話す。
ただ脱退は自社分の積み立て不足を一括納付することが条件で、負担金は数十億円に上る例もある。負担金を用意できる企業だけが抜け、基金には経営の厳しい企業ばかりが残されかねない。
中小企業が同業や地域単位でつくる総合型基金の多くは年金の受給者が増える一方で、現役世代の加入者は減り続けている。ある石油業の基金の常務理事は「脱退企業が増えて加入者がさらに減れば、基金の運営は困難になる」と漏らす。
脱退が広がると、基金の制度疲労はさらに進む。だが厚生労働省の有識者会議が6月にまとめた厚年基金の制度改革案は、財政が悪化した基金が解散をしやすくする程度で抜本改革には遠い。
厚労省は制度改革の議論をさらに進め、来年の通常国会に関連法案を提出する方針。制度そのものの廃止や受給者の年金減額基準の緩和といった踏み込んだ改革を迫られる可能性もある。
(以上、記事より)
今回の長野地裁判決は、今後の厚生年金基金の在り方に大きく影響を与えかねないものと思われます。
実際に厚生年金基金からの脱退に向けて積立金の不足額を拠出するとし、脱退申請をしても、代議員会が否決するケースにより、基金を脱退できない状況にある企業が増えています。
基金側が脱退による運営困難を懸念し脱退を認めないのでしょうが、拠出金の運用も思わしくない中、毎月の拠出金が赤字の補てんにしかなっていない状況であれば、少しでも早く、負担金が少ないうちに脱退したいという企業の本音も理解できます。
今回の判決により、脱退理由に制限があるにせよ、基金からの脱退申請が増えると思われ、また同様の裁判も増える可能性がありそうです。
AIJ問題が引き金となった厚生年金基金の運用実態。
運用を一任している企業側も、自社の加入している基金の運用状況をこれまで以上に監視する必要があるでしょうし、基金側も運用状況の早期公開を行っていくべきといえそうです。
年金資産の運用状況(企業年金連合会)
http://www.pfa.or.jp/jigyo/tokei/shisanunyo/shisanunyo01.html
厚生年金基金の平成23年度決算速報(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002gbjw.html
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投稿日:2012/08/27
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