人事・労務の知恵袋

法改正 改正労働契約法(1)雇い止め法理の法定化

労働契約法の改正が行われて1ヵ月が経ちました。
一部は8月10日より施行されています。

今回の改正目的は、有期雇用者に対して有期労働契約が反復更新される中で生じる雇止めに対する不安を解消し、また雇用期間が有期である事によって不合理になりがちな労働条件を是正するための法整備であるとされています。

労働者保護の立場にある法律がさらに保護を強化した感は否めません。

この労働契約法の改正内容について、数回に分けてお伝えしたいと思います。

今回は改正公布日から施行されている「雇止め法理の法定化」について。

雇止めとは、有期労働契約で期間満了後の契約を更新しないこと、特に何度か契約更新を繰り返しているにもかかわらず、使用者=会社が契約更新を拒否することをいいます。

この雇止めについては、労働者保護の観点から、過去の最高裁判例により一定の場合にこれを無効とする判例上のルール(雇止め法理)が確立されており、今回の法改正では、雇止め法理の内容や適用範囲を変更することなく、労働契約法に条文化されています。


【雇止めに該当する有期労働契約】

1)既に数回更新された有期労働契約で、その雇止めが、無期労働契約の解雇と社会通念上同じと認められるもの
★最高裁第一小法廷S49.7.22日判決(東芝柳町工場事件)の要件を規定したもの

2)有期労働契約の契約期間が満了となる時に、この有期労働契約が更新されるものと労働者に期待させるような合理的な理由があると認められるもの
★最高裁第一小法廷S61.12.4日判決(日立メディコ事件)の要件を規定したもの

ここでの「合理的な理由の有無」については、最初の有期労働契約から最終雇止めされた有期労働契約の満了時までの間での、あらゆる事情が総合的に勘案されます。

また、一度、労働者が雇用が当然に継続するだろうと期待を抱いていたにも関わらず、契約期間の満
了前に、使用者が更新年数や更新回数の上限などを一方的に伝えたとしても、伝えたという行為だけで、直ちに合理的な理由がないとはされないとされています。


【要件と効果】

上記のいずれかに該当する場合に、使用者が雇止めをすることが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、雇止めが認められず、今までと同じ労働条件で、有期労働契約が更新されます。


【必要な手続き】

今回条文化されたルールが適用されるためには、労働者からの有期労働契約の更新の申込みが必要となります。

この場合、労働契約期間満了後であっても遅滞なく契約更新の申込みを行えば、条文化されたルールの対象となります。

このような契約更新の申込みは、使用者による雇止めの意思表示に対して「嫌だ、困る」と言う程度の、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもかまわないとされており、必ずしも書面での申込みでと限定されていうわけではありません。

現実的には口頭で「嫌だ、困る」と言っただけでは、最終的に言った・言わないの水掛け論にもなりかねず、書面で確実に意思表示を行うべきでしょう。


●関連記事●
2012/09/05 労働契約法改正のポイント(リーフレット)
http://blog.livedoor.jp/nari_sr/archives/51840628.html
2012/08/13 改正労働契約法、8月10日から一部施行
http://blog.livedoor.jp/nari_sr/archives/51836981.html


労働時間の管理・残業代を減らしたい
就業規則や賃金制度を見直したい

社会保険料の見直しを考えてみたい
社員とのトラブル、
入社退職時の手続きについて
★お問い合せ・ご相談はこちら
https://www.nari-sr.net/contact/
24時間受付
info@sming.jp(24時間受付)
電話 03-6300-0485(平日10:00~18:00)


★オフィシャルページもご覧ください
https://www.nari-sr.net/


【人事・労務の玉手箱fbページ】で最新情報をチェック!
https://www.facebook.com/jinjiroumutamatebako

投稿日:2012/09/10
IT業界の人事・労務、就業規則 社会保険労務士法人スマイング
〒151-0072 東京都渋谷区幡ケ谷2-14-9 ヤナギヤビル4F
新宿駅から京王新線で3分「幡ヶ谷駅」下車 北口より徒歩1分
※当サイトの文章、イラスト、写真、図や表などの無断転載を禁止します。

人事・労務の知恵袋一覧

PAGETOP