日本経済新聞より
約2000億円の企業年金資産の大半が消失していた問題で、AIJ投資顧問の2011年3月末の顧客構成がわかった。企業年金は80を超えており、同一の業種や地域の中小企業が集まる「総合型」の厚生年金基金が約9割を占めた。なかには年金資産の3割以上を投じた基金もあった。中小基金では年金の積み立て不足が拡大するとみられ、どう穴埋めするかが焦点になりそうだ。
AIJの顧客構成は企業年金を所管する厚生労働省への取材で明らかになった。同省が現時点で把握している同社と契約した企業年金は全体で84に上る。このうち厚年基金が74を占め、残りは大企業を中心とする確定給付企業年金だった。
84の企業年金がAIJと結んだ契約は延べ120件程度。AIJは企業年金の受け皿として租税回避地の英領ケイマン諸島に3本の私募投資信託を設定しており、複数の私募投信に投資した「リピーター」の存在がうかがえる。AIJの資料によれば、1顧客あたりの投資額はほとんどが50億円未満となる。
大手企業ではアドバンテストや安川電機がAIJと取引していたことがすでに判明している。このほか、高度な年金運用で知られていた大手の電機メーカーや情報通信企業などが名を連ねているもよう。
中小の厚年基金では、北海道内のタクシー会社60社強が加盟する北海道乗用自動車が15億円、運送会社約360社が加盟する北海道トラックは20億円程度を投じていた。新潟県内の中小企業約80社が加盟する新潟県機械金属工業は6億円強を委託した。総資産の約1割に上るという。
長野県の約400社が入る長野県建設業は26日現在、AIJへの年金資産の委託について公表していない。ただ同基金の年金資産を管理する金融機関が作成した資料によれば、10年12月末時点で約190億円の運用資産のうち約64億円をAIJに投じていたとされる。運用資産に占める比率は約34%に達していた。同基金は現在もAIJへの投資を継続しているようだ。
企業年金は運用難に直面している。08年秋のリーマン・ショック時の株価急落に伴う損失などの挽回を狙って、高利回り運用をうたったAIJに年金資産を委ねた事例が少なくない。AIJは08年の金融危機時も安定した収益をあげていたなどと年金基金に説明していた。
84の取引先がAIJによる年金消失問題でどれだけの損失を被るのかはなお不透明。厚労省は厚年基金の運用について強制権限を持たないが、株や債券など伝統的資産以外に投資する「代替投資」の比率が3割を超える基金があるかどうかを調べたうえで、該当する場合には年金資産の運用状況を聞くなど対応を検討する。
(以上、記事より)
AIJの企業年金資産消失の問題は、決して他人事とはいえません。
多くの企業年金、特に確定給付年金や厚生年金基金の運用状況は回復してなく、毎月企業が掛金として拠出しているものも、今までの運用損失と年金受給者の支給への穴埋めに使用されているケースが多く、現役世代が将来受け取る年金額を担保できていないのが実際のところです。
企業年金の財務諸表は分かりにくく、現実にどの程度の資産残高があるのかを信託会社などの資金運用会社もしっかり説明をしてくれません。
退職金制度の見直しなどで確認してみると、当初予定していた額が残っている事はほとんどなく、多くの企業では、損失分の補てんや将来に向けての対策についても十分な説明がされていないまま、毎月の掛金を拠出しているケースがみられます。
このままでいくと、現在年金を支払っている額そのものの減額と、現役世代が将来受け取るべき年金額の減額の両方を行っていかないと、運用が成り立たず、結局は損失を補てんするだけで終わってしまいかねません。
今回の事件を良い機会とし、自社の企業年金の運用がどうなっているか現実を把握し、問題があるようであれば早期に対応を検討する必要があるといえます。
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