昨日、とある相談がありました。

「退職金制度そのものは変わっていないのですが、実際に支給される退職金は3年前より減っている」というのです。

これは一体どういう事なのでしょう。

退職金制度としては、退職時の【月額基本給】に支給係数と勤続年数をかけて金額を計算するという、ごく一般的なものでした。

ただ問題となるのは【月額基本給】の額が実質減っているため、3年前に退職した方が、退職金が高いというわけです。

掘り下げて確認してみると、給与の支給項目は変わっていないものの、各支給項目の支給割合が年々変化してきているため、結果として【月額基本給】額が下がっており退職金額も低くなっていたのです。

退職金制度は、必ず法律で定めなければならないものではなく、会社が任意に設定できるものです。

その一方、一度制度として設けた場合には「賃金債権」として、社員には退職金を受け取る権利が発生しますが、実際に権利が発生するのは「退職するとき」になります。

つまり退職金は、法律上では退職時までは社員の権利とはなっていませんので、社員の同意なく勝手に不利益変更を行う事ができるといえばできるのです。

とはいえ、会社が好き勝手に変更しても構わないという事ではありません。

不利益変更の怖いところは、仮に変更した時に社員が同意していたかどうかに関係なく、退職して退職金を受け取る権利ができた時点で訴えることができるという点です。

例えば、退職金制度を変更し減額する事となった場合、社員全員から同意書も取ったし大丈夫だろうと思っていても、「当時は同意したものの強制的に同意させられた」など反撃があるかもしれませんし、一人でも加入できるユニオンなどもありますので、同意書があるから完璧というわけでもないのです。

では会社側は退職金制度を変更する事はできないでしょうか。

会社が成長している時期に作られた退職金規程を変更できず、払いたくても払えない退職金のために賃金や賞与をカットするのは、現実的ではありません。

不利益変更には慎重の上にも慎重に対応すべきですが、会社の実情を正直に伝え、誠意を込めて説明をし、社員に理解を求めるべきであり、その上でも一部の社員から同意を得られず訴えられるのであれば、その時はその時という考えも必要でしょう。


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