【今回のポイント】
1.試用期間は通常の解雇よりは広い範囲での解雇の自由が認められているが、具体的な根拠を示す必要がある
2.過去の判例からみても最長で1年程度、年次有給休暇の発生要件からみても長くても6か月程度
試用期間を設ける際に3か月程度とする企業が多いのですが、試用期間に上限はあるのでしょうか?
試用期間については法的な具体的な定めがないため、3か月以上の期間で設定されても問題ありませんが、労働者の立場から見れば正式採用ではなく不安定な期間であるため、試用期間を設ける場合には「期間の定め」をする必要があります。
試用期間の法的性格に関しては、判例上、様々な説がありますが、「解約留保付き労働契約説」が有力です。
この説は、新規採用者は採用と同時に期間の定めのない本来の労働契約が成立するが、試用期間の勤務の結果として不適当と判断されたときには労働契約を解約する事ができるというものです。
つまり、採用と同時に期間の定めのない労働契約が成立しており、本採用を拒否するのは解雇とみなされるわけですから、取り扱いは慎重に行うべきですが、通常の解雇よりは広い範囲での解雇の自由が認められているといえます。
この「通常の解雇よりも広い範囲での解雇の自由」について、判例では「企業が、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を、試用期間中の勤務状態により知るに至り、その者を引き続き雇用することが適当でないと判断することに合理性がある場合」とされています。(三菱樹脂事件・最高裁判決S48.12.12)
企業=使用者は、試用期間中または試用期間終了後の労働者の雇用継続を不適格とする場合、その判断の具体的根拠を示す必要があり、その判断の根拠が妥当であるか客観的に判定される事となります。
試用期間の長さについては法律上の制限はないものの、あまり長期にわたる場合は、民法90条の公序良俗に違反するとされることがあります。
※民法90条の公序良俗
公の秩序(国家や社会などの一般的な秩序)や、善良の風俗(社会の一般的な道徳的観念や社会通念)に反するような法律行為は無効とする。
過去の判例からみても、最長で1年程度とするのが通例となっています。(ブラザー工業事件名古屋地裁S59.3.23)
年次有給休暇の発生要件が、雇用された日より6か月経過した時点となっている事からみても、長くても6か月程度までとすべきでしょう。
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人事・労務の知恵袋
- ワンポイントQ&A 試用期間に上限はあるのか?
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投稿日:2012/11/30
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