日本経済新聞ビジネスリーダー
【ホテルオークラ東京に学ぶスマート敬語実戦講座】より
数多くのVIPも宿泊するホテルオークラ東京には、利用客に気持ちよくホテル内で過ごしてもらうための「言葉遣いの基本」がある。
これは新入社員研修や部門ごとの研修で、繰り返し徹底させている接客応対の基礎。
「丁寧すぎる敬語は、かえって慇懃無礼な印象をお客様に与えかねないので、極力分かりやすい言葉遣いで、簡潔に意思を伝えるように指導しています」と、新入社員研修を担当する宿泊部・電話交換室室長の畑中哲子さんは語る。
例えば、「あいにく話し中でございますが」という言い方は丁寧に聞こえるが、語尾を「が」で止めるのは、ホテルオークラ東京ではご法度。相手の次の対応や言葉を待っているかのような印象を与えるからだ。
「話し中でございますが、ご伝言を承りましょうか」のように、こちらの対応を最後まで話して締めくくったほうが、相手の好感度もぐっと増すという。
「佐藤様のフルネームをお願いいたします」。
ホテル、レストランの予約時などによく聞く常套句だが、これもホテルオークラ東京ではNG。
「カタカナ語をむやみに使うとお客様に不快な印象を与える恐れがあります。この場合は『佐藤様のお名前を伺えますか』、または『佐藤何様でいらっしゃいますか』と話すようにしています」(畑中さん)。
「離席」「出張中」などの熟語も、「突き放した硬い感じを相手に与える」(畑中さん)ので会話では避けたほうがよい。
「席を外しております」「出張しております」と話し言葉にすれば、伝わる印象もずっと柔らかなものになる。
こうした言葉の気遣いを日ごろの会話にもさりげなく織り込めば、きっと一目置かれるに違いない。
■ホテルオークラ東京 「言葉遣いの基本」■
基本1 単語止めで話を終わらせない
「これ、会議の資料」などの乱暴な言い方は同僚でも避ける。「これは会議の資料です」と、「です・ます」で丁寧に。
基本2 「が」止めで話を終わらせない
「話し中でございますが」と、文が途切れたまま終えるのは×。続けて「ご伝言を承りましょうか」など自分の対応を加える。
基本3 安易にカタカナの言葉を使わない
「佐藤様、フルネームをお願いいたします」は×。安易にカタカナ言葉を使うと、相手を不快にさせることもある。
基本4 熟語はあまり使わず、平易な話し言葉を使う
「離席」「出張中」など、硬い印象の熟語は避ける。「席を外しています」「出張しております」と、話し言葉で分かりやすく。
基本5 相手の使った言葉は別の言葉に置き換えない
相手が「リザベーション」と言ったのに、「予約」と言い返すなど言葉を安易に置き換えると、不遜と受け取られかねない。
■新入社員研修の例題■
問題1 「おっしゃられる」は文法的には間違い。正しい敬語に直しなさい。
問題2 「山本先生はおられますか」は間違った言い方。正しい敬語に直しなさい。
問題3 「本日、田中はお休みを頂いています」は誤り。正しく言い直すとどうなりますか?
問題4 「もう一度、言ってください」を、正しい敬語に言い換えるとどうなりますか?
問題5 「わかりません」「できません」のような否定語の印象を和らげるためには、どう言い換えますか?
【解答】
1 おっしゃいます
「言う」の、相手を立てる尊敬語「おっしゃる」に、尊敬表現の「られる」を付けた「おっしゃられる」は、二重敬語と呼ばれる誤った使い方の代表例。「おっしゃいます」または「おっしゃる」が正しい言い方である。
2 山本先生はいらっしゃいますか
「おられますか」は年配の人も間違えやすい表現。「おる」は、そもそも自分がへりくだるときに使う謙譲語なので、「られる」を付けても相手への尊敬語にはならない。「いらっしゃいますか」というのが正しい尊敬語だ。
3 本日、田中は休みでございます(本日、田中は休んでおります)
休みの許可は会社から与えられているので、社員同士で「お休みを頂きます」と言うのはよいが、社外の人に言うのはおかしい。「本日、田中は休みでございます」と言うべき。社員の休みに「お」を付けて社外に伝えるのも避ける。
4 もう一度おっしゃっていただけますか?
「~してください」はつい言ってしまいがちだが、基本的に命令形の表現なので、相手に対して失礼に当たる。「おっしゃっていただけますか」と疑問形にして相手に委任、依頼する表現の敬語に変えれば、伝わる印象も柔らかくなる。
5 わかりかねます、いたしかねます
「わかりません」「できません」と否定語を断定的に話すのは素っ気ないし、聞いた相手の印象もよいものではない。「わかりかねます」「いたしかねます」など、「かねます」を加えて、印象を和らげたい。
(以上、記事より)
お客様との会話で、よく聞かれる内容です。
社内に対するものなのか、社外に対するものなのかがごっちゃになってしまうんですね。
経験を重ねてくると、間違った使い方も知らず知らずのうちに正しいと思って使っている事があります。
自分も初心に返り、正しい敬語の使い方を復習したいと思います。
上記内容に関連する「ビジネスマナー」ページもご覧ください。
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